社会福祉法人丹後視力障害者福祉センター
「設立50周年記念俳句大会」結果発表

当センターの設立50周年を記念して俳句を募集しましたところ、応募者は北は北海道から南は鹿児島県にわたり、計337句の応募がありました。
選考結果は以下のとおり。 
応募いただきました皆様、ありがとうございました。

特 選  芳一(ほういち)の目(め)に月(つき)の残響(ざんきょう)ひやり
       正念亭 若知古 様  <山口県周南市>

秀 作  目(め)を守(まも)るゴーグル黄砂(こうさ)降(ふ)りにけり
       竹澤 聡 様 <神奈川県横浜市>

秀 作  目を入れた達磨に耳の無い寒さ
       黒飛 義竹 様 <広島県広島市>

佳 作   「サンタ来(く)る」問(と)う幼子(おさなご)の輝(かがや)く目(め)
       津崎 みどり 様 <京都府京都市>

佳 作  白杖(はくじょう)の人(ひと)に腕(うで)貸(か)すアロハかな
       石川 昇 様 <東京都世田谷区>

佳 作  涼やかに点筆響く会議中
       山副 のり惠 様 <京都府京丹後市>

佳 作  くりくりと落(お)ち葉(ば)のお面(めん)覗(のぞ)く目(め)よ
       太田 怒忘 様 <滋賀県大津市>

佳 作  茶碗ふろ 疲れを癒やす 目玉おやじ
       平林 知之 様 <京都府京丹後市>


社会福祉法人丹後視力障害者福祉センター設立50周年記念俳句大会選者評
岩城久治選

特選
 芳一の目に月の残響ひやり       山口県 正念亭若知古
評 よしかずさんか、ほういちさんか、等々上五の名前はいったい誰やねん、と読者は気にかかることでしょう。文脈は次に「目」とあります。これを手がかりとして、盲目の琵琶法師耳無し芳一(ほういち)を想い起こしました。だが、まてよ、月を聴覚で把えるには違和感がある。月は視覚で把えるだろう。そうか、耳無し芳一のモデル明石(あかし)覚一(かくいち)は途中失明して琵琶法師に、ならば月の残影を音曲の縁語として残響に言い換えた、詩的なレトリックで一句を仕立てあげた。他の応募作に見当らない文芸的処理に注目した次第です。折しも朝ドラの「バケバケ」は小泉八雲、八雲の作に「耳なし芳一」があります。時局に呼応しました。

秀作
目を守るゴーグル黄砂降りにけり     神奈川県 竹澤 聡
評 ゴーグルは目を守るためにつけるものではあるが、使用の場面・状況がこの句の場合季語と無理なく結びついているところに、目をテーマとする課題に相応しい提示でありました。

秀作
 目を入れた達磨に耳の無い寒さ      広島県 黒飛 義竹
評 願いがかなったので達磨人形に目入れをしたのだが、耳が具(そな)わっていないことに気がつく。顔としては物足りない、作者のこの心象が時候の寒さとも通い合いました。目以外の身体の部位にも同時に関心を向けています。

講評
 応募作品三三七句、府内だけと誤認していましたので、都道府県内の40近い自治体の所在地からの応募でびっくりです。ありがとうございました。
 課題が「眼(目)」であったのでこの文字を詠み込んだもの、詠み込んではいないが、これに関わる内容で詠まれているもの、中にはどう考えても「眼(目)」を想起し得なかった一般雑詠句も少しくありました。
 いずれにしても応募句全句を分析類型化してみました。
 たとえば「広辞苑」の「目」を引きますと、「目が合う」から始まって「目を遣る」まで百四十近い慣用句の項目、中には「目には青葉山時鳥初松魚(がつお)」の俳句まで載せています。
 要するに「目」のある慣用句を取り入れて有季で案じて一句となす。
 これを一つの型として分類する。
 一事が万事、こちらの設定した項目で類型化していきます。すると時には発想も叙法も近似して季語だけが異なる句が詠まれている、作者としてはどこも悪くないのに、不都合なことに表現史としてはすでに発表されてしまっている不幸な句があります。
 三三七句、こうして消去法で対象外になって、残っていった句を最終選考対象として再選三選、消去しながら選を重ねて決定致しました。



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